それはわたくしが大学生のころだった 当然に今までの人生の全てが完璧だった それ故に誰に汚される事も想定する事すらなかった その日、わたくしはゼミの教官に呼ばれた 特に何も思わずに指定の時間にゼミ室に向かった 扉をノックする 「失礼します 花園野々花まいりました」 「おう はいれ」 珍しくきびきびした声だった 「そこに座れ」 今まで受けた事の無い厳しい声に動揺する 「何だこの研究テーマは  こんなものはすでに他の人がやっているんだよ」 睨みつけながらそんな言葉を言い放った その言葉にかつてない怒りと絶望が沸いた それはただよく理解してもらえなかっただけで説明を付け加えれば済んだ話かもしれない ただ一回は活を入れようという教育方針に過ぎなかったのかもしれない それでも脳が高速化し一瞬で未来を予測した どれだけ高い成績実績を残そうが常に上の人間がいる 大企業の社長になろうとも資本家どもにいびられる そして、いまさら資本家に参入する機会はない 例え、参入できたとしてそれは何十年後になるのだろうか それに気づくと目が覚めたら教授を殺していた 記憶をたどればまず一発殴っていた その後窓枠に頭を叩きつけて頭蓋骨のかたい感触を感じていた 今感じるのは柔らかい感触だ 頭蓋骨が砕けて脳が潰れている感触だった 「わたくしは誰よりも人類よりも上の存在  見下すものは何人たりとも殺す」 言い捨てて部屋を後にした もはや向かう先は一つしか無かった