「やーーー」 「ああああ」 「ぎゃあああ」 「わあああ」 すごい形相で騒ぎわめく 手足をばたつかせ転びまわり立ち上がろうとしてはずっこける 「ひっひいいいい うあおおおお」 #ホラーリスト 「はいカット いいねすばらしいね 最高だよ」 ホラー映像の撮影中だった #ホラーリスト 「こんなに見事な演技が出来るとは思わなかった しかもそれぞれ驚き方に個性がある すばらしい もっとカメラマンを連れてくればよかった」 #風菜 「演技は出来ないがいつでも本気で騒ぐ事は得意だからな」 #ホラーリスト 「ほんとにすばらしいよ ぜひ他の作品にも出演してほしい」 #風菜 「いいでしょう これをはずんでくださいよ」 手で金を合図する #ホラーリスト 「わかった 2倍……いや、4倍のギャラを出す」 #ホラーリスト 「スタート」 #柚月 「わー きゃー」 甲高い声でかわいらしく悲鳴を上げるのは柚月だ バタバタと慌てたように階段を駆け下りる 表情は今にも泣きそうだ #愛莉 「……」 無言で階段を駆け下りるのは愛莉だ 速い #風菜 「うおおおおおおおおお」 やや大げさに雄たけびを上げてダンダンと足音高く慌てて階段を降りるのが風菜 #砂季 「ああ…… ああ……」 絶望の声を喉から漏らし絶望の表情で無我夢中に階段を降りるのが砂季 ふらふらと階段を降りついに転倒し階段から転げ落ちる すぐに立ち上がり次の階段を下りた #ホラーリスト 「カット 一発OKだよ だいじょうぶ?けがは?」 #砂季 「平気です けがは無いようです」 #ホラーリスト 「よかった」 #風菜 「見事な演技だな」 #砂季 「そうだろ」 #風菜 「そういう事にしておいてやるか」 #砂季 「いや、ふつうにわざとだから」 その後は黒子として木の枝を揺らしたりドライアイスを炊いたりした #ホラーリスト 「作品の完成は長くても一か月かからないよ 完成したら送るよ いやあ、今日は素晴らしい撮影が出来た ぜひ、また協力してくれ 今度一緒にホラースポットを見に行かない? こっちの方はギャラは出せないけど」 #砂季 「こっちも楽しかったですよ ぜひまたお願いします」 #風菜 「こういったら失礼かもしれませんが、こんなんでお金稼げるなんて最高ですね」 #ホラーリスト 「そうでしょう 君たちもやりなよ」 #砂季 「なにをやれば?」 #ホラーリスト 「自分がやりたいことを何でもいいからやればいいんだよ 全力でやれば金くらい稼げるよ」 #砂季 「そううまくいくかな? あの、参考にしたいんで詳しく教えてください」 #ホラーリスト 「うん、まず今日の撮影した映像は他の映像と組み合わせて動画にする 無料で公開してるものもあるけど有料のモノもある」 #砂季 「ふむ」 #ホラーリスト 「あとは毎晩生放送で怪談、さらに週刊誌も出している もちろんホラー情報誌さ イベントは参加できるものは何でも参加してる」 #風菜 「それで儲けは?」 #ホラーリスト 「最近はこんなところかな」 #風菜 「すげー」 #砂季 「売れるって事は人気あるんですね すごいですね」 #ホラーリスト 「自分が本当に面白いと思う事を生み出す事が大事だと思う それが結局、他人を感動させるんだと思う 自分が面白いと思う事を面白いと感じてくれる人もきっといるから 他人のためにやろうと思ってもうまくいかないかも 人の気持ちなんてとてもわかるものじゃないと思うよ そしてそれを誰よりも極める事かな」 #砂季 「誰よりも…… 業界トップという事ですか それは難しいですね」 #ホラーリスト 「そんなに難しくないと思うよ だって自分が好きな事おもしろい事をやるんだよ 一番になって当然だよ」 #砂季 「いや、同じものが好きな人が百人いたとして百人の中で1位になるのは無理だ」 #ホラーリスト 「百人いたら百人好きな事は違うよ スポーツかゲームやる訳じゃないんだから 自分一人だけの業界を作るんだよ」 #砂季 「なるほど ですがそんなことが可能でしょうか」 #ホラーリスト 「可能だよ 最初は同じでも突き詰めていけば人はそれぞれ大きく違ってくる ……私にはホラーセンスが無かった」 #砂季 (なんだそりゃ……) #ホラーリスト 「怪談を書くのも映画を撮影するのも下手だった オカルト界で活躍している人と自分を比べて自分は駄目なのかと思った でも、そうでもなかった 自分のこだわりや好きを出し切ればそこにはその人にしか作れない作品が生まれる その人にしか作れない感動が生まれるんだよ 今でも客観的に見て私の作品はとても一番とは言えない だけど、誰とも違うものを作れていると思ってるよ だから競合相手なんかいないんだ」 #砂季 (はたしてそううまくいくかどうか…… しかし、多少無理してでもコアプライアンスを持つ事は有効だろう)